ミーハーdeCINEMA物置

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ネクロマンティック特別編

NEKROMANTIK / ユルグ・ブットゲライト

ネクロマンティック

 

人それぞれの愛のカタチ

まぁ、世の中にはいろんな人がいるもんでございますよね。
大きくわければ「人類」などとひとまとめに括っちゃったりする中にも、細かくカテゴリを分けてけば、こういう後ろ指さされても文句の言えないような映画を作る困ったドイツ人もいれば、スピルバーグ監督のようなみんなに愛される天才もいれば、そういえばバッド・テイストとか撮ってたはずが、巨匠になっちゃったオレたちの星もいるよな、ってことになりますよね。
以上!

 

いや以上じゃない、以上じゃ。

 

えと、そんなわけで世の中は広く、それぞれの頭部に装備された味噌が起こすバラエティ豊かな神秘のひとコマとして、死体を愛する人たちも幸せに暮らしておりました。

物語の主人公はロブ青年。
死体フェチという業の深い性癖ながら、死体処理業なる趣味と実益を兼ねた仕事について、なんと同癖の彼女もいるという恵まれた生活を送っていました。
処理する死体から、ささやかに目玉なんかをクスねたりして、ビン詰めの人体パーツのコレクションを、コツコツ増やすのが日常の楽しみ。

 

ところがある日、腐敗状態も熟しまくったステキな死体をまるごと手に入れちゃったからさぁ嬉しい!
GFのベティも大喜びです。
こういうのを、水を得た魚、死体を得たネクロフィリアというのでしょうか。

さっそく死体も含めた3Pだぁぁぁぁぁぁぁ!とオメメがキラキラ。

・・・・って、3Pの主役は、死体の股間に立てたぼ、ぼ、ぼ、ぼ、棒ですか(汗)?!
っていうか棒、ノコギリで切った、テーブル(イスか?)の足だし!
あああああーベティ、いくらなんでもそら痛いやろ!!!

 

まぁ、糸の引きっぷりもねばこいえっちなシーン自体は、その筋が趣味の人達のロマン満開、まさに成人向けキャンディキャンディと言っても良いぐらいだと個人的には思います。


死体の目玉を口に含み愛撫するロブ青年の恍惚の極みな表情からも、死体に対する愛が、あふれんばかりに優しく描かれているのです。

 

ところがロブ青年の甘く幸せな日々は、ある日突然終わりを告げます。
職場のロッカーが、同僚のひんしゅくを買うほどに臭かったのが原因で、あっさり職を失ってしまったのです。
仕事だけなら次がある、けど、死体を調達できなくなったのが致命傷!!


「信じられない!私に死体を探せというの?この死体がいつまで持つと思ってるのよ!」

などと怒ったベティはロブ青年を置き去りに、慰謝料がわりに死体を持ち逃げ!

 

一瞬にして「天職と、恋人(ベティ)と、愛人(死体)」を失ったロブ青年。

まさに踏んだり蹴ったりで、ボーゼンとわびしさのテンションを上げていく。
ああ、ロッカーの中の作業服を、せめて洗濯していれば・・・。

 

というわけで、絶叫も高らかに血ドバと死にゆく様がおぞましいスプラッタ映画とはちがって、単に死体を愛でる映画なので、この人たちとは分かり合えないとは思うものの、怖いってわけじゃーありません。
極端に言えば、ちょっと珍しい趣味の人の青春映画のようなもんだと思います。
お花畑でキャッチボール、なんて青春ラブストーリーものの定番シーンもキッチリ入って、違和感なし。
ただ、ボールがちょっと、生首なだけ。

 

そりゃーネクロフィリア映画だから、ぐっちょり描写がとことんエグく、凡人としては気をしっかり持たないときっついです。
監督の意図があるにしても、動物解体逆再生なんか辛すぎて死にそう。

そのように拒絶感もハンパないけど、妙に心に残るんです。
とにかくパート1の壮絶なラストシーンが投げてくるボールが魔球すぎて、バッターの条件反射で青空に向かって打ち返したくなるんですよね。
ん?アタイバッターだったっけ・・・?

 

そしてパート2は美女のネクロフィリアが主役です。
ロブ青年のニュースを見て彼に思いを寄せてしまった彼女は、さっそく墓を暴いてロブ青年の死体をゲット!
まだしもフレッシュな死体を相手に、とりあえずコトに及びます。

それでめでたしなら、こっちも白目をむく程度で穏便にいられるのだが、せつないことに死体はいつか腐ります。
美女はとりあえず未練の深い部分だけを冷蔵庫に保管。

驚いたことに、実は彼女には生きた彼氏もいました。
でも生きた彼氏といちゃいちゃしても、あんまりテンション上がりません。
しかし彼女は、いいコト思いつくのです!!

 

彼女にとっていいコトは、彼氏にとっては命とり。
やっぱ、性癖の一致がないと二人揃って幸せにはなりにくいもんなのですよな。
まぁしかし、2のラストはある意味めでたしめでたしなのかも。

 

 

これってキワモノ扱いされてる映画ではござるが、完全版と違って特別編は、ダイジェスト版のようなものなので感触もいくぶんライトでございます。

人様におススメはしないんですけど、ブットゲライト監督の名前は一生忘れられないし、すごい映画なことは確かなので、そっと物置に入れておきます。

 

 「ネクロマンティック特別編」データ

  • NEKROMANTIK 1987,1991年 ドイツ

 

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監督

  • ユルグ・ブットゲライト

出演

  • ダクタリ・ロレンツ
  • ベアトリス・M
  • ハラルト・ランド
  • スーシャ・スコルテッド
  • モニカ・M
  • マーク・リーダー